『言の葉』 相沢睦

言の葉

 

辞書。武田百合子先生から學びます。

一覽

あ行

お屠蘇(おとそ)
正月に一年間の邪気を払い長寿を願って呑む縁起物の酒であり風習のこと。

……夫婦が桜並木の道を歩いて行く。盛装の女房をつれて、普通のみなりの男が歩いて行く。熱を出しきったあと……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,11頁

か行

恰好(かっこう)
「格好」の別表記。恰好の餌食はこちらの表記が正式。

……奥の部屋へ向かって歩いて行く途中であった玉が、右の前肢を一歩踏み出そうとして宙に浮かせた恰好のまんま、カナシバリにあったごとく立ちすくんでいた。私の声の方角へ……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,14頁

さ行

世帯道具(しょたいどうぐ)
家庭生活に必要な、箪笥や台所用品などの道具。

……桜の下のテーブル付きベンチに、今日は烏帽子に古革靴の浮浪者が、左右に世帯道具をつめた紙袋を二つずつ置き、大股ひろげて腰を下ろし、走ってくる人たちを、くわっとした眼付きで眺めまわしている。黒々とした頰ひげの……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,19頁

棄てる(すてる)
「捨てる」の別表記。

……と言った。「じゃあ、一番古い、手がとれても使ってる、あれを棄てて……」そこまで言いかけて、ふと廊下を見ると、奥の部屋へ向かって歩いて行く途中であった玉が、右の前肢を一歩踏み出そうとして……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,14頁

盛装(せいそう)
パーティーなどで着用する華やかな装い。

……夫婦が桜並木の道を歩いて行く。盛装の女房をつれて、普通のみなりの男が歩いて行く。熱を出しきったあと……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,7頁

た行

随いて(ついて)
ついていく。通常この表記はしない。
「随行」から来ている?

……「ああ、気持ちわるくなってきた。これまだずっとやってるんだろう、松の内は。五日にもう一度出直してくるか」と半ば独りごとめいて話しかけながら随いて行く男がいた。栗きんとんと蒲鉾と黒豆を食べて……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,11頁

な行

啼く(なく)
獣や鳥など、動物の発声。一般的には「鳴く」の字を用い、「啼く」は獅子や竜などについて用いることが多い。

……イヤな声だ。啼きかわしていたカラスが一層ざわめいた。屑入れから溢れ……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,21頁

縫いぐるみ(ぬいぐるみ)
獣綿を芯にして、外側を布で縫い合わせてつくった人形玩具。幼児の災厄を除く祓物として布製の人形「這子」から来ている。

……やっぱりそうかと思った。そのうちに紺青色の縫いぐるみのような佐藤氏は、すたすたとサンダル履きで客席にやってきて……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,21頁

捩れる(ねじれる)※旧字体
紐など細長いものが捩れ曲がった状態。
繁体字を用いないと表記できない模様。

……と極彩色の折込広告が叫んでいるのだ。段ボールを重ね敷きした上に捩れたようにねころんでいる新宿地下道の浮浪者たちも……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,9頁

は行

はすかい(斜交い)
ななめ。
私は「はす向かい」のことを「はすかい」と言っていたのですが、誤用だったのでしょうか……?

……黄色シャツ、白ズボンの男が芝生のまん中で、突然、はすかいの空に顔をあげて叫び始めた。そのあと……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,18頁

斜向かい(はすむかい)
ななめ向かい。
私は「はす向かい」のことを「はすかい」と言っていたのですが、誤用だったのでしょうか……?

……澁澤くんはそれを書くことができたんだね。この間、重症のぎっくり腰で入院したはす向かいのO婦人も同種の薬を痛み止めに使用したらしく幻覚を見、さめても同様に記憶していて……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,18頁

犇く(ひしめく)
大勢の人が1か所にすきまなく集まる。
ぎゅうぎゅうづめも牛が集まってと思いきや、関係ないそう。平仮名より暑苦しさが増す気がする。

……昔、ハリウッドには、いかに沢山の大美人がひしめいていたかがわかった。そしてヒトのおかしさ……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,21頁

一摑み(ひとつかみ)
片手で摑むこと。また僅かな分量を摑むこと。
その他「摑みあげる」の表記も。

……五百円の袋のほかに、おまけだと言って赤い小袋に一摑み入れ、おつりと一緒にくれた。三千円しかおつりがないと……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,27頁

霏々(ひひ)
雪や雨が絶え間無く降るさま。

……と迅速に雪景色の夜となった。子供のころ、雪が霏々と降る、という言いあらわし方を、雪がヒイヒイ声をあげて泣いて降ってくるように見えるから、そう言うのだと間違えていた。それからもう一つ……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,17頁

柝(ひょうしぎ)
方柱形の堅い木で、打ち合わせて鳴らす、拍子を取るための音具。

……嬉しくなってくる。ひょうしぎが一つ鳴る。客席のざわめきがひいて……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,23頁

ま行

や行

ら行

蘭陵王(らんりょうおう)
中国南北朝時代の北斉の皇族、高長恭のこと。また彼を題材にした雅楽の曲目『蘭陵王入陣曲』のこと。
ただし、作中では文学的とあるので、曲を題材にした三島由紀夫の『蘭陵王』を指していると思われる。

……幻覚を僕に語りました。澁澤君は文学者だから幻覚も文学的で、蘭陵王などが出てくる幻覚でしたが、O夫人のは幻覚でも極めて現実的でした……

武田百合子『日日雑記』中央公論新社,1997年,18頁

わ行

表記

醬油、繁昌、上瞼、前肢14(動物)、

上記とは別に気になった言葉

単語
・言うに事欠いて
・隅に置けない
・仄聞
・仄聞く
・愛餐酒盃
浩瀚こうかん
外套がいとう コート
・徒労
・のべつ幕なし
寂寥感せきりょうかん
・砂上の楼閣
・斜陽
・紅葩
・痛飲
・先回
・共感性羞恥
おくび
歔欷雨きょきう

 
・メメント・モリ
・襲の色目
・札付きの悪
・諧謔
みなごろし
まなびや
・逡巡
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紊乱ぶんらん
瓦斯ガス(吉幾三)
・あたりきしゃかりき

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彼岸花

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