ある日。
もえ、しゃんどーん、どん。
いつも見ている生配信で知らないお酒が出てきた。
有名なシャンパンだそうだ。
昔結婚式でシャンパンは口にしたことがあるが、銘柄を気にするほど興味はなかった。
今回は妙に気にはなったが買わなかった。
スーパーで買い物ついでにお酒コーナーに立ち寄った。黒霧島、魔王、それから萌シャンドン?
何か不思議な縁を感じたのでそのまま買った750ml5000円。
風味がいいのは2、3日だという。
一人で飲み干すのは厳しかった。
自分の行動力にちょっとだけ後悔した。
実家で
萌シャンドンって知ってる(有名だと聞いたので)
なにそれ
シャンパンなんだけど
シャンパンなんか結婚式以外で飲んだことないわ
いいご身分ねぇ
ははは
なんだかすごく傷ついた。
言い方が悪かったのかもしれないし、自慢げに聞こえたのかもしれない。ただの冗談だったのかもしれない。
でも、すごく私の価値観を否定された気分になった。
それからしばらく、実家には帰らなかった。
別に誰も悪くないのに。
ある日。実家、夜の食卓。珍しく父母妹私が揃っていた。NHKの7時のニュースが流れながら、母「最近仕事はどうよ?」私「まぁまぁだよ、景気は悪いけど」妹「私なんて、なんでマスクないの? これの対応ばっかりでバイト行くのが嫌になる」談笑する。私「最近お酒が好きで、ちょっといいシャンパンをなんでもない日にあけたんだよね、モエエシャンドンって言うんだけど知ってる?」父「知らんな。シャンパンなんて披露宴でしか飲まないからな。普段シャンパンなんていい身分だな。こっちは真面目に働いてるんだよ!」笑い飛ばすように言った。母と妹も笑っていた、だから私も笑った。けれどすごく傷ついた。私という存在が否定された気がした。他人なら流せるのに。自立したつもりだった。まだまだ子供なんだと突きつけられた。
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