外待雨

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ある日。

仕事終わり。会社から一歩出たら、弾幕のような雨粒がアスファルトに打ちつける。鞄の底から取り出した折り畳み傘は開いたそばからコウモリ傘になって使い物にならない。滅多に使わないパーカーのフードを被って駐車場まで走った。

朝起きて雨音がすると落ち着かなくて、いつもより会社が遠くに感じる。
車通勤とはいえ、駐車場から事務所までは歩いて10分。服は重く、つま先は冷たい。

子どもの頃のある雪の夜。「明日の朝に車を出せなくなると困るから」と、父と母が駐車場の雪かきをしていた。隣で私と妹は雪合戦をして、はしゃいでいた。
すると「雪が楽しいのは子供の時だけよね」と母が呟き、父は大きくうなずいた。イヤミでも何でもないのに、言葉が心につかえた。

 

2日連続で雨が降った、休日の朝。玄関を出ると昨日見た弾幕が今度はタイルに打ちつける。
子どもの頃のある雨の日。わざと傘を差さずに下校することがあった。濡れた学ランから漂うノリ匂いが好きだった。梅雨が大好きで、紫陽花が大好きだった。
傘を持たずに雨の中を歩き出す。
木々が雫をまとう姿がお化粧をしているみたいで綺麗で、雨樋あまどいからコンクリートに打ち付ける雫の音が心地いい。
明日も雨降らないかな。降ったらいいのにな。

 

3日連続で雨が降った、休日の朝。咳と鼻水が止まらない。
どうやら今の私は、あの頃ほど若くないらしい。

  

 

外待雨 相沢睦 
 

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