言葉の効き目

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ある日。

仕事前、セブンイレブンで昼ごはんのおにぎりを二つ買う。シャケとシーチキン。面白味は欠けるけれど、これが一番うまい。異論は認める。

いつもこの時間帯は決まって、メガネのズレた白髪のご老体と、アジア系のカタコトの女性のコンビなのだが、今日は190cmくらいたっぱのある店長らしき人物といつもの女性のコンビだった。カウンター内で店長らしき男が女性店員に給与明細を渡しながら談笑していたが、意図せず話を遮るようなタイミングで、レジに行ってしまった。
商品を差し出すと、店長らしき男に「264円になりますぅ」と言われた。素直に財布を取り出す腹の底では「なります」が無性に気になる。バイト敬語と言うらしいが、店長はバイトではないのだから不適切なのでは、などと思いつつ、普段を装って支払った。

「レシートください」、そう言うと、
「給与明細のお返しです」と、レシートを渡された。

今度は二つ気になる。
まず、言い間違いを恥ずかしがりもせず堂々としていること、もう一つは何もあげていないから「お返し」される筋合いがないこと。
けれど、いちいち気にしていたらキリがないので、「ありがとうございます」とだけ残して立ち去った。

 

改めて。会社に向かって車を走らせるのだが、先ほどの出来事が気になって仕方がない。
すると、ジーンズのような薄い青色のベルエア? に乗った、青い瞳の「いかにも」な外国人が急にウィンカーを1回点滅させて割り込んできた。

「F○CK!!!」

窓を開け中指を立て、真っ赤な顔で言われた。
その光景があまりに非日常的で、映画のワンシーンのようで、少し嬉しい気持ちになって微笑んでしまった。
「○ね」って言われたら、どんな気分だったのだろう。

 

さっきまでのモヤモヤが、どうでもよくなった。

 

 

言葉の効き目 相沢睦 
 

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