ある日。
ソファから外を見る。うす青いラムネ瓶色の空。見上げるほどに青は濃くなる。うたた寝する。外を見る。さっきより濃い青。またうたた寝する。ソファの肘掛けからはみ出した頭に血が上って、少し気持ちが悪い。
立春。ほとんど外出していない。ソファに、寝て、座って、また寝て、淡々と消費する。
こうも単調だと、別段記すこともない。それでも、何か文章にしてみる。パッと見たら、黒い文字がただ並んでいるだけ。色も、音も、匂いもない。
そんな私の文章が、人々にはどれほど、つまらなく映るのだろうか。ネットニュース、YouTube、LINEにタイムライン警備。現代人はとにかく忙しい。
人々は、感染症、芸能人の不倫、給付金やマスクの販売情報。その日の出来事のうちで、自分が重大と思う事件か、自分の興味を相当に刺激する記事でなければ、手に取らない。それほど時間に余裕がない。
新型コロナウイルスが世界を席捲した。いつ終束するかも分からない様相。夏に来たる東京オリンピックは延期。不況の影は姿を潜め、徐々に日常を蝕んでいく。
日々、文章をだらだらと記している。飽きたら終わり。春だから。それだけ。書くのか、書かないのかすら、私の都合でしかない。その癖、多くの人に読んでもらいたいと、SNSで喧伝する。おこがましいにも程がある。
ソファから外を見る。頭も首も激しく痛い。
濃い青は地平線の方だった。
さかさまの景色 相沢睦