ある日。
午後1時、紫帆を車で迎えにいく。家へ来て、夕飯の豚しゃぶを食べ、お互いの近況を話す。
彼女は自分の話にひと段落つくと、私の話はそこそこにアニメ『進撃の巨人』をつける。
「『進撃の巨人』観たことないんだけど、おもしろいの?」彼女に尋ねる。
「理由はわかんないけど、気づいたら続き観てるよ」
「言ってた通りだ」と気づくまで、それほど時間はかからなかった。
『進撃の巨人』は人がたくさん死ぬ。主要人物であっても。偉大な夢を志していても。聖人でも。悪人でも。水風船を落としたみたいに、パシャッと。
ネットニュースで。
志村けんさんが急逝した。原因は新型コロナウイルスによる肺炎らしい。
突然の訃報に多くの芸能人やファンから、惜しむ声があがった。中でもビートたけしさんのコメントは印象的だった。
「何もこれ(コロナ)で逝かなくてもいいじゃん」
死ぬって、あっけなくて、なんていい加減なのだろう。
壁の向こう側 相沢睦
脚注
●紫帆(友人)